No.2829の記事
2013年06月19日(水)   雨 (複雑な思い)


おもてのラックの雨よけカバーを外していると、小さな女の子が公園の方へ向かって、「早くきて!あと20数えるうちにきて。20、19、18、、、」とカウントダウンを始めていた。友達と遊んでいるのだろうと思ってとくに気にせずにいたのだが、カウントダウンが進むと、「12、11、、、あと10だよ。数え終わるまでにこないとブン殴る。10、9、、、」
 
おいおい女の子がぶん殴るだなんて、ずいぶん乱暴なこと言うんだなとびっくりして振り返ってその子を見てみると、そんなことは言うはずもなさそうなかわいらしい女の子だった。小学3年生くらいだろう。こっちの聞き間違いかな?そりゃそうだろうね、あーびっくりした。とやり過ごしたのだが、5秒前までくるとまた、「早くこないとほんとにブン殴るよ!」と言ったではないか。あーやっぱり本当にぶん殴るって言ってたんだ!どーなってんの?こわいわもう。見た目とのギャップもあってけっこうショッキングな事実。
 
「さーーーん!にぃぃぃぃぃぃぃー!いーーーーーーーち!ゼロ!!おわり!ブン殴るよ。そこ立ってて!そこに立っててっ!」
 
まさか本当に殴りゃしないだろうと思いながらもとりあえずちらりと振り返って様子を見てみると、呼ばれていたのは弟のようで、弟は小学1年生くらいだろうか、立ってろと言われた場所にキョーツケ(気を付け)の姿勢でまっすぐに立っていて、その子の前まできた女の子は、「いいね。約束だからね。ブン殴るよ」なんて言っている。
 
軍隊かよ。冗談キツイぜ。まさか本当に殴るわけじゃないだろうなとやや不安を感じながらも様子を見ていると、女の子は手に持った帽子を振り上げた次の瞬間、それをバシッと弟の頭に振り下ろし、その勢いのまま今度はバシッバシッとほっぺに往復ビンタを食らわせたではないか!さらに攻撃は続きそうな勢いに驚いて、「おい!何やってる!やめろっ!」と言うと女の子はこちらを振り向いた。
 
「こいつがわるいんだもん」
「悪くないっ。おまえが悪い。あやまれ!」
「やだっ!」
「ばかっ!あやまれっ!」
「いやっ!知らないからそんなこと言うんだ。こいつと暮らしてるとほんといやんなるっ」
「・・・・・・・」
 
いったいどんな家庭で育ってるんだ・・・。ニュースに登場するような世界が目の前で展開している。
 
「人を叩いちゃだめだろ。早くあやまれよ」
「やだっ!」
 
そう言い放つと女の子はプイっと向こうへ行ってしまった。残された男の子はキョーツケの姿勢のままヒックヒックと泣きじゃくっている。姉ちゃんからこんな仕打ちを受けているということは、親からも同じような仕打ちを受けているのではないのか?子は親を見て育つ。姉は親のやっていることを見て同じようにやっているような気もする。
 
この男の子にはなんて声をかければいいのか。難しいところだったが、「きみは悪くないんだよ。帰ったらおうちの人になんにも悪いことしてないのに叩かれたって言うんだぞ」とは言ったものの、親からもそういう仕打ちを受けているとすれば逆効果かもしれない。複雑な思いでその場を離れると、向こうの方からまた姉ちゃんが呼んでいた。
 
「20!19!18!早く帰んないと遅くなっちゃうよ!17、16、、、」
 
男の子はとぼとぼと歩き始めた。