No.2571の記事
2012年10月04日(木)   曇り (LED蛍光灯・完結編)


きのうの返事がさっそくあるかと思っていたのだが電話なんてかかってきやしない。できないならできないで連絡くらいよこすのが筋ちゃうんかい。いや、彼女は今日はお休みなのかも、、、といいほうに考えてみたり、とにかく今日は連絡がなかったなと思っていたのだが、午後6時半を回った頃になって彼女は上司を連れて、いや上司に連れられてやってきた。彼女はなんだかしょぼくれた様子で、自分ひとりでまとめられなかったことが悔しいような、恥じ入るような、そんな様子で上司の後ろに控えていた。叱られた子がチェッと片足で地面をケンケンと蹴っている映像がダブる。
 
「先日はこの上原(仮名)がお邪魔させていただきありがとうございました。じつは彼女、今年入社の新卒でして、今回の契約のお話が初めてのこととなりますもので、なかなか至らない部分も多かったかと思いますが、彼女にももっともっと成長してもらわなくてはいけませんもので今回は一人で行かせたわけですけど、契約書をご記入いただいたところまできてこのような話が出てきたということで、まあ私がこれの上司にあたりますもので、もう一押しさせていただきたいなと・・・」
 
さすが上司。しっかりしてらっしゃる。一通りのあいさつが終わって、「先日上原のほうがお示ししました数字がちょっと間違っていましたもので、私のほうで改めて計算させてもらったんですけど」と話は本題へ。彼女は上司の後ろで地面をケンケン。なんだかかわいそうでまともに見られない。
 
さてその新たに示された数字は、彼女の数字と比べて段違いに上がっている。「これじゃ、ありえないでしょうね」と、そこで取りいだしましたるもう一枚の見積書。わかっとんねんわかっとんねん。「今のは前フリの見積書ってことですね」とツッコミを入れると、「えへへ、あは、まあ、そうですね、、、」笑ってごまかすしかあらへんがな。後ろで彼女も笑っている。
 
「もう精一杯、ここまでお下げできます。これでどうかひとつ」
「うーーーーーん、これでもまだ1000円超えてますよね。持ち出しが1000円超えるようじゃやる意味がないですから」
 
上司さんはカチャカチャと電卓を叩いて、いや実際はツツツとスマホをタッチして説得にかかる。
「計算しますと、一日あたり110円くらいですか?どうでしょう?一日一本コーヒーを我慢したと思えば、、、」
「まあね。物は、言いようですよねえ」
「えへへ」
「うふふ」彼女も笑っている。
 
「きのうもお伝えしておいたんですけど、月々の持ち出しが500円くらいで収まるならやりましょうという話だったんですよね」
「500円ならやってもらえますか?」
「それならいいですよ」
「ちょっとお待ちください」と言って、けっこう長い間スマホの電卓を叩いていた上司さんがようやく出してきた数字は500円を切っていた。
「これでどうですか?」
「ああもう、これなら即OKですよ」
「ありがとうございます!だけどちょっと、さすがにこの数字じゃ私の独断では決められませんので、ちょっと上司に相談させてもらっていいですか?もしかすると通らないかもしれないですけど、ちょっと確認させてください」
 
上司の上司まで登場の展開だ。その場で上の上司に電話を入れて承諾を請う上司さん。「ありがとうございます!」電話をしながら電話先の上司に深々と頭を下げて電話は切れた。「OKもらいました!」
 
というわけで改めて契約締結。もしかして上司の上司まで登場したのも筋書き通りの展開だったのか?なんとなくまんまと乗せられた気もしないでもないが、まあこちらが希望していた条件をほぼ満たしているのでいい契約ができたのではないだろうか。けっきょく高価なLED蛍光灯一色を5年ローンを組んで買い取ったかたちだが、計算上は、その費用の大半は、LEDに替える事によって下がる月々の電気代で賄える事になっている。どうかね?単なる数字のマジックにはまっているだけなのか?
 
新卒の彼女もがんばってシュートを放ったのだが、けっきょくキーパーの取りこぼしたボールを最後に押し込んだのは上司さんだったわけだ。だけどまあ彼女のアシストがなければこのゴールもなかったわけで、彼女にとっても大きな仕事となったのではないだろうか。
 

 
前編はこちら。